「ゆっくり茶番劇」が商標登録される

YouTubeやニコニコ動画を見ている人なら一度は見た事があるであろう「ゆっくり茶番劇」。このコンテンツが第三者によって商標登録され、今後権利はその登録者に帰属する事になり、ネット上では大変大きな混乱が起きているようです。

「ゆっくり茶番劇」とは?

「ゆっくり茶番劇」とは、主に動画サイトなどに数多く投稿されているコンテンツの1種です。丸っこい顔をした2人の女の子が会話形式で様々な事柄を解説していくというのが主な内容で、最近起きた事件・事故を始め、映画・ドラマ・アニメ・ゲームなどのレビュー、他愛の無い会話まで、中身は多種多様です。

登場する2人の少女は、同人サークル「上海アリス幻樂団」が発表しているシューティングゲーム「東方project」に登場するキャラクターで、音声は主に合成ソフトなどが使われています。つまり、このコンテンツは「東方project」の二次創作に当たります。

「上海アリス幻樂団」の代表であるZUN(ズン)氏は、常識の範囲内なら、誰でも自由にこのコンテンツを利用してよいと公言しており、今までは特に許諾も無く、誰でも自由にこのコンテンツを制作する事ができました。収益化も問題ありません。しかし、このコンテンツが「上海アリス幻樂団」とはまったく無関係の人間によって商標登録されてしまったのです。

商標登録したのは誰?

「ゆっくり茶番劇」の商標登録をしたのは、柚葉(ゆずは)というYouTuber。チャンネル登録者数は22万人で、主に「ゆっくり茶番劇」を利用した動画を作成していたようです。
この方は「上海アリス幻樂団」とは全くの無関係の人であり、ZUN氏の許諾も取らない状態で独断で商標を登録。ZUN氏が登録するならまだしも、何の関係も無い人が勝手に登録したという事で、ネット界隈では大炎上する事に。

柚葉氏は「ゆっくり茶番劇は「東方Project等のキャラクター」を用いなくとも成立します。よって、東方Project等の他社商標及び版権との関係は一切御座いません」とツイート。キャラクターではなく、あくまで「ゆっくり茶番劇」というスタイルのコンテンツの権利を主張しています。

この方自身が「ゆっくり茶番劇」というコンテンツを考案したのならまだ納得も行く所ですが、大炎上している事からも、この方自身が考案したコンテンツではないようです。

なお、当初は「商用利用するなら年間10万円の利用料を払う事」としていましたが、現在(2022年5月18日)は、料金は取らないと明言。しかし、権利としては依然として自分にあると主張しています。

様々な人達が行動を開始する

これに対して、多くの人達が行動を起こし始めています。

まず、「上海アリス幻樂団」の代表であるZUN氏は、ツイッターで「法律に詳しい方に確認しますね」とツイート。また、ニコニコ動画を管理するドワンゴの専務取締役COOの栗田穣崇氏も「法務部とミーティングを行いました」と報告。更に、取得の代理を請け負った特許事務所も「皆様に愛されている商標である事を知らずに引き受けてしまった」と謝罪する事に。
2022年5月18日時点では、まだ大きな動きはないようですが、この商標を取り消す動きがある事は間違いないようです。

なお、商標を登録した柚葉氏や特許事務所の元には爆破予告なども届いているとの事。

一体どうなる?

過去を振り返ってみると、無病息災の妖怪として人気の「アマビエ」をお菓子会社が商標登録しようとしたり(却下されている)、2ちゃんねるから生まれたキャラクター「のまネコ」をエイベックスの子会社が著作権を持っているかのように扱い非難されたりと、本来「誰の物でもないモノ」の権利について、度々騒動が起こってきました。

どちらの案件も何だかんだで商標登録は行われず、今も誰もが利用できる状態になっています。
今回の件がどういう形で決着がつくのか、気になる所です。